ゴールじゃなくてスタート

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『高村 聡(26)柊奏(21)お忍びデート』 『柊奏(21) 新恋人はバックダンサーKEN(23)』 『柊奏(22)丹羽 晶(28)結婚間近!』 奏は、ほんとにドジな子で 自分の立場なんて一切考えない 「どーせ嘘っぱちなんだし、言ってろハゲボケって感じ?」 いつの間にか、酒豪になってた奏は、堂々と飲み歩くんだ 疑うわけじゃない 何かあるとも思ってはない だけど、奏と一緒にいられることができること自体に嫉妬する 奏と会え、食事し、酒を飲みながら、その目に奏が写ることすら気に入らない 『奏と噂になるのは、俺だけのはずなのに』 何度となく、心の中で呟いた言葉 今でも恋人のはずの俺とは 数年前に別れたことにさせられてるってどうなの? それを、奏は否定もせず 他の男と熱愛報道されてるってなんなの? けれど、俺に、それを言える権利はない 奏の元に行けないのは俺 奏は俺を待っててくれてる側なんだから・・ 「空港が嫌いだ。朝陽をさらってく飛行機はもっと嫌いだ」 就任式の翌日、奏は泣いた 別れ際、いつもは泣くのを我慢して笑ってた奏が 空港で、俺の腕に飛び込んで、初めて号泣したんだ 「一緒に行こう、奏」 連れ去りたかった 「行きたい、別れなきゃいけないのは、もう辛い・・」 奏にだけ全部捨てさせるのはフェアじゃない わかってるんだけど、どうしても連れ去りたかった 「でも、そんな無責任なことできない、だから・・」 その言葉の先を聞くのが、心底怖かったのを覚えてる 「もう逢いに来なくていい」 やはり、な言葉だった 「奏っ・・」 終わり、を初めて覚悟した瞬間 「だから、早く『帰って来て』」 奏は、真っ直ぐ俺を見ながら 「何年だって待つ。だけど、それまで逢わない。」 最終宣告をして、また泣き崩れたんだ
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