ゴールじゃなくてスタート

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優秀な人材のヘッドハンティングや 教育制度の改革、雇用制度の改正 信じて任せていた社員が、多額の金を持ったまま飛んだこともあった 南アジアに日本の温泉旅館を造り 海外挙式用に、水上に教会を建てた 新婚旅行で燃え上がりそうな水上コテージも用意した 計画だけでも手一杯、その上、現場の監視にも気を配り 地元住民との交流を深めて行くのにも時間がかかった 次から次へと勃発するトラブル しかも、この場所に限ったことではなく、日本、アメリカ、オーストラリアの伊勢谷グループも当然放っておくわけにはいかない 時間は、いくらあっても足りなかった 俺の、いや、伊勢谷の全てを賭けたワンダーワールド オープンから1年が経ち ようやく目立った大きなトラブルもなくなり、安定して機能するようになった ホテルの予約が取れないという、ありがたいクレームが多すぎる為 ホテルとコテージを増設することになったことくらい 人件費もそれなりに掛かるけれど 金より大事なのは人 ちなみに、人より大事なのは情報だ 社員の心は、会社の心 現場の気持ちを知らないような無知な経営者だけにはなりたくない 10周年記念のイベントを開催させるのが、とりあえずの目標 その先のことを左右するのは時代の流れ もし廃った時のことは、すでに視野に入れている ワンダーワールドの当たりで、調子に乗った親父が やけに、タヒチのホテル買収を進めてくるけれど そんなことは二の次で とにかくクリスマス・イヴには、奏を迎えに行く そう思ってた矢先の事件だった 『柊奏(ひなり)真夜中のラブラブデート!相手は元恩師超イケメン高校教師!』 これまで、何度も同じように報道された奏 相手の男に嫉妬しつつ、心のどこかで奏に限って、ありえないと信じていた もしも奏の心が動いたとしても、必ず取り返すつもりだし自信もあった だけど今回は別だ 奏が好きになった相手が透矢だったら? 考えたくもない 唯一、俺が勝てる気がしない男 『どうしました、社長』 「恭介、日本に帰るよ」 『・・・はっ?』 「とりあえず飛行機と住むところだけ手配して」 『最終確認だけど、まじで?』 「本気と書いてマジと読むやつだよ」
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