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「コーヒー飲むか?」
「あ、いただきます」
「待ってろ」
性格に大きな難はあるが、ヤクザの淹れるコーヒーは上手い。
それは認めてやろう、うん。
ついでにこいつ、とんでもなく頭は良いらしい。
教え方も上手くて、カリスマ教師とか言われてる。
確かに、こいつの授業はわかりやすい。
聞きに行けば、丁寧に教えてもくれる。
しかしながら。
大事なことだから2回言うけど、性格は、たいぶ残念だ。
コピー機にプリントをセットして300枚。
機械音が地味にうるさい部屋のソファーに座って、テーブルの上に2つ並んでるカップを見ながら、コーヒーが落ちるのを待つ。
「・・・瓶底」
ぼそっと呟いた声が聞こえて目線を上げると、目を細めたヤクザ桐生と目が合う。
「眼鏡にまでなんか文句あるんっすか」
「いや、いつも笑わせてもらってる」
・・・は?
「そりゃ、良ぅござんしたね」
「うむ。時々笑っちゃいけないところで笑いそうになって迷惑してるけどな」
・・・こいつ、ほんとに
「まぢで、」
「どーぞ」
文句を言いたいところだけど、差し出されたいい香りには負けてしまった
「・・・どーも」
フッと笑う仕草を目の前でされるとさ
『やっぱこいつカッコイイな』
とか思っちゃって、どーでもいいや、ってなっちゃうのって不思議
顔のイイやつって、ほんとに得だと思う。
つーか、ヤクザ桐生をまともに相手にしてたら、キリがない。
「・・・ものすっごい見られてる気がするんすけど」
熱くて、カップを持ったまま、フーフー冷ましてるアタシをジッと見る視線
「見てるから、そうだろうな」
優雅にコーヒーを飲みながら、目線だけは向けられていて
「まだ猫舌は治らないのか」
「・・・んな簡単に治るもんなら苦労しないつーの」
大きなお世話。
「まだ警察官になるつもりか」
「・・・瞬時に全く違う話題振るのやめてくれませんか」
警察官はアタシの夢だ文句あるか。
「お前なら食っていけるのに」
「勝手な想像でアタシの人生決めるな」
勝手なこと言ってるな。
「まぁ、性格がそんなんだから損することは多いだろうけど」
「そのセリフ、全力でそっくりお返しますけど。」
お・ま・え・も・な!
「面白いな、お前は」
「どーもありがと・・」
「褒めてねーよ」
キィェェェェェェェェェ!!!
「そー言えば、しょっちゅうここに呼び出すのやめていただけますか」
「俺のPC、自分が使いやすいように勝手に設定してるくせによく言えるな」
「それっくらいいいじゃないっすかね!ほぼ毎日ここで仕事させられてんだから!」
「だからって壁紙をエロ画像に変えるこたぁねーだろ。」
「お喜びいただけるかと思いまして」
「ガッコのPCでエロ画像観てるただの変態じゃねーか俺」
「ぶふふふふふふ・・」
「笑うな」
「とにかく、性悪なくせしてアホみたいに人気があるヤクザ教師のせいで、控えめで大人しくてビビリな可愛い女子生徒であるアタシの平和な学校生活が最大の危機にさらされてんっすよ。」
「よくもぬけぬけと色々言えたよな、今」
「どーも、ありが・・」
「だから褒めてねーって。」
わかってるっての!!!
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