万年一位王子

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万年一位王子

「遅れてすいませ・・・って、あれ?」 モモ尻ちゃんを握り締めて向かった生徒会室。 「遅いよ、柊。またコーヒー飲んで来たんでしょ」 「あの香りには勝てないよねー」 「まぁ、そうだね(笑)」 生徒会室には、王子伊勢谷しかいなくて。 ひとり、会長席のPCで、何やら作業をしてた様子。 「みんな、もう帰ったの?」 「大して問題性のある意見もなかった体育祭の反省だけだったからね。早々に解散したんだ。」 「そっか。」 「柊、これが去年の体育祭の報告書。これを改善する意向ね。」 プリントの束を差し出されて、それを受け取る。 「それから今日の反省会で出た問題点がこれなんだけど、清書してくれる?」 「おk。これだけでいいの?」 プリント2枚を清書するだけの簡単なお仕事ですが・・ 「ん。それだけ。」 「・・ふーん。」 そんなわけない。 進学校桐生学園生徒会、結構めんどくせーんだよ。 「なに?(笑)」 「どうせ伊勢谷がやってくれたんでしょ?」 こう言えば 「ちゃんと柊の仕事は残しといたでしょ?」 「まぁ、うん。そうなんだけど。」 反論できないように返ってくる。 「どうせ暇だったし、いいんだよ」 「帰ってくれても良かったのに」 いつも忙しそうにしてるのは知ってる。 「何をすべきか伝えなきゃでしょ?」 「書置きで良かったよね」 万年一位の王子伊勢谷朝陽(イセヤ アサヒ) 君が勉強だけしてるガリ勉じゃないことも知っている。 「あ、そうだ。柊、携番教えてよ。ラインするから」 「あ、うん。そうだね。090 ○○×△ ○・・」 「ちょ、柊?」 「なにさ」 「いや、そんな簡単に教えてくれるとは思わなかったから、ちょっと驚いた」 「簡単には教えないよ。学校で聞かれることもないけど」 「そうなんだ」 こんなに気を使ってくんなくてもいいのに。 「いい?もう1回言うよ?」 「うん。」 番号を交換して 「ありがとう」 って、お礼を言われた。 「へんなチェーンメールとかいらないから」 冗談交じりに言うと 「送らないから(笑)」 クスクス笑ってる。 実はアタシ、この伊勢谷が大の苦手だった。 万年2位で負けてるからではない。 そこは、勘違いしないでいただきたい(笑) 完璧な容姿 完璧な頭 完璧な運動神経 完璧なお家柄らしいし? まぢでさ、こんな完璧揃いなやつが存在していいのかってくらい、ラビリンスみたいな男。 んで、この柔らかい笑顔っつーか、微笑み? 王子スマイルってやつ? 胡散臭えでしょ、普通に! としか、思えなかったのが本音だ。 裏で絶対、悪いことやってんだ、こーいうタイプは なんて思ってたのも確かで。 でも こいつ、ほんとに王子なのかも・・って思うことが多々あって。 それからかな。 こうして普通に話すようになったのも。 「・・・柊」 PC画面を見てキーボードを叩いてた伊勢谷と、目が合って。 「あ。」 「そんなに見つめられると、さすがに照れるんだけど(笑)」 笑ってるその仕草は、決して嫌がってそうな顔ではなくて、ちょっと、ホッとした。 PCの時にだけかける眼鏡は、彫刻みたいな綺麗な顔の伊勢谷のイイ男具合を3倍増しさせていて・・ぶっちゃけ、鼻血ものだ(笑) 「うん、ガン見してたよね、ごめん。」 「意識飛んでたね(笑)」 アタシの悪い癖。 一点を見たまま、頭だけが高速回転してしまって、そのまましばらく意識が飛んでしまう。 うん。 見られてる側としたら、気分悪いよね。
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