万年一位王子

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プリントを頭に入れて一気に打ち込み、USBに保存したものを伊勢谷に渡す。 「うん、さすが。ありがとう。」 確認した伊勢谷が笑う。 「っしゃー! んじゃ、アタシはお先に失礼させていただくとしようか」 早々に帰ろうとすると 「ねぇ、柊。今日はやっぱりバイト?」 伊勢谷に呼び止められ 「ヒヒヒヒヒヒ」 この問いに、思わず笑みがこぼれる。 「ぶはっ!悪い子の笑いしてるけど(笑)」 釣られて笑った伊勢谷に 「これがさ、聞いてくださいよ伊勢谷さん(笑)」 アタシはご機嫌だ。 「今日は金曜だってのに、なんとまぁ、バイトが休みなんですよ!だからさ、今日は観たかった映画を借りまくって帰ってさ、まったり朝まで観るつもりなのですよ。至福だねー。ビバッ!休日前夜!ってことで、また月曜日に。」 伊勢谷に背中を向けると 「柊が観たかった映画ってなに?」 「ん・・・?」 伊勢谷よ。 貴重な時間を、くだらない質問で無駄にするな。 アタシが何を観ようが勝手であろう??? 「色々ありすぎて、レンタルショップで選び倒すよ。んじゃ。」 「じゃあさ、こうしよう?」 おいコラ、伊勢谷。 いい加減にしないと、その綺麗な顔の眉毛、マジックで繋げんぞ。 「俺の父親、映画好きで、すごい量のDVD持ってるんだ。うちで観ればいいよ。」 「・・・・・・は?」 今、なんつった?コイツ。 「夕飯はどうしようか。食べていく?それとも買って帰って食べながら観てもいいね。どっちがいいかな。」 自分のPCの電源を落として 「ちょ・・・え?」 勝手に話を決められてる状況に追いつけないアタシのPCの電源を落として。 「なにを両手に包んで大事そうに持ってるの?」 「え? あ、これは大好きなモモ尻ちゃんのレアもの。さっきヤクザ桐生からもらったのだよ。」 眼鏡を外して、目を細めた伊勢谷が、一瞬不機嫌そうに眉間に皺を寄せて 「・・・ふーん。行くよ、柊。」 「へ?」 「ここの電気消すから出て。」 「あ、うん」 って、ちょっと待って。 電気を消して、ドアに鍵を閉めた伊勢谷に、手を握られて引っ張られてるこの状況 「ちょっと伊勢谷」 「なに?」 「なに?じゃなくてさ、落ち着こうよ、いや、落ち着けよ!」 「落ち着いてるよ」 「・・・んー、どう考えても、普通じゃないと思うのだよ、うん」 「そうかな?」 「一応確認すっけど、今からどこ行くって?」 「俺の家。」 「それって順を追っていかなくても、この時点でおかしいじゃんよ!」 「とりあえず柊、靴を履き替えようか」 「あ、うん」 ・・・って、おい! 同じクラスって、下駄箱も同じ場所。 こんな当たり前のことが、こんなに不都合に思ったことはない!! 「はい、これ被って。」 「断る」 差し出されたヘルメット。 「気絶させてでも連れて帰るって決めたから。」 「やってみろ!アタシ、空手2級だし!」 伊勢谷のバイクの前で、こんな言い合い。 「・・・・2級って強いの?」 って、嘘だけど。 以前観た、TVドラマのパクリだ、うん。 「しろーとよりは。」 ドラマのセリフ、まんま返されたことに、ちょっとびっくり。 「俺、段持ちだけど」 「・・・・・あんたさぁ」 まじで、空手まで強いとか、ねーわ。 「柊、周り見て」 「あぁ??」 いささかムカつきながら、周りを見る。 かなりの人数の生徒達が、バイクの前で言い合いしてる異色な2人を見ていて。 「これ以上注目浴びたくないなら後ろに乗って」 「乗るのがいやだわ。全力で走る」 「・・・ほんと、柊は手ごわいね」 「なにがだ」 「柊、ごめん」 「なんで謝、」 瞬間 アタシの瓶底眼鏡を取られて 「んなっ!?」 声を上げた瞬間、メットをカポっと被らされて。 「眼鏡返して欲しいなら、ここからまず離れなきゃね?早く乗って。」 こ、このやろう・・・ 「眼鏡返せ」 「返さない。乗ったら返す。」 「空手、」 「初段」 この、くそやろう!!! 「おい、王子伊勢谷」 「うん?」 「あとで覚えとけよ。必ず眉毛、繋げてやるからな」 「ぶはっ!わかった(笑)」
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