生まれてきてくれて、ありがとう

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俺は、いちごのショートケーキ 柊は、モンブラン 「栗にロウソクは刺さらないでしょ?」 「そこをさ、刺してやりたいんだよ。わかるかい?チャレンジャー魂ってやつだよ!」 どう考えても、いや、考えなくても固い栗に、刺さるわけのないロウソク。 なのに、必死に立てようとしてる柊に、笑いを堪えるのは無理な話(笑) 「一体、何と戦ってるの?」 「見たらわかるでしょ、栗だよ、栗!」 ぶはっ!!! ほんとに、この子・・・ 面白すぎて、お手上げなんだけど(笑) 柊のモンブランは、栗がケーキにのめり込んで、陥没しちゃってる。 「やばい。このモンブラン、すっごい汚い!」 「自分がしでかした結果だよね、それ(笑)」 笑いすぎて、お腹痛いから。 「作戦変更。伊勢谷のそのイチゴちゃんにだな・・」 「あはははは!絶対くると思ったけど、やめて(笑)」 柊は、ほんとに楽しい子で。 真剣に、バカをやるからなのかな。 天然って言うと、本人は怒るから、言えないんだけど かなり天然で、それがものすごく可愛いって自覚がないから、もう・・・ 「これでいいでしょ?」 陥没して、栗の姿が見えないケーキに無理やりロウソクを立てた。 イチゴが半分沈まされた哀れな姿のケーキにも、ロウソクを立てて火を点ける。 「消さないでね。写メ撮りたい」 って言うと 「これ、撮るの?こんな汚いの撮るの?撮ってどうすんの?」 ありえないって顔で言う柊だけど、撮っておきたかったんだ(笑) 「ひどい・・」 って、笑いながら写メ撮ってる俺を見てて 「・・・・アタシも撮っとこう」 なんて言いながら、自分自ら汚したケーキを写メに撮ってる柊(笑) 「まだ消さないでね」 って、大きく息を吸い込んで、吐いて。 手拍子だけの、アカペラで ドリカムの『happy happy birthday』を歌ってくれた。 「誕生日、おめでとう、伊勢谷。」 揺れるロウソクの灯 隣で微笑む彼女 「や、ばい。本気で嬉しい・・」 こんな誕生日は、生まれて初めてで 「早く消さなきゃ。ケーキ燃える」 「一緒に消そう?」 「なんで誕生日、一日違いなんだろうね!どうせなら一緒で良かったのに」 ケラケラと笑う彼女の笑顔を見てたら、思わず、抱きしめてしまってた。 「生まれてきてくれて、ありがとう、柊」 自分で言って、自分の言葉に泣きそうになった俺。 「うっわぁ・・。ヤッバい・・。感動した、今のキザなセリフ・・」 泣きそうな声で、俺の背中に腕を回す柊のぬくもりに どうしたって、涙が出そうになる情けない俺だったんだ・・。
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