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「い、伊勢谷・・」
「んー?」
バスルームから出てきたらしい柊が俺を呼ぶ。
柊が好きそうなDVDを物色してた俺。
「え、と・・・あの・・・」
いつもはストレートな柊の歯切れが悪い。
「どうした?」
DVDから目を離して、柊を見ると・・
「っ!?」
バスタオルを身体に巻いただけの柊が立っていて。
「あ、あの・・・いせ、や・・・あの・・・」
自分の身体を、抱きしめるように・・恥ずかしそうに・・
「ひ、いらぎ・・」
そんなことを・・
そんな姿を・・・
そんな仕草を・・
「・・・・わかってるの?」
・・・落ち着け、俺。
「俺、言ったよね?必死で抑えてるって」
いじめてるつもりはない。
いじめたいわけでもない。
「好きすぎておかしくなりそうだって、正直に言ったはずだよね?」
「う、うん・・」
「触れたくて、キスしたくて、その先もしたいし、そう長く我慢もできないって伝えたはず。」
「ちゃんと聞いたよ。ちゃんとわかってる・・」
「本気で襲われたいの?」
ねぇ、柊。
俺、自分で、どうしていいのかわかんないくらい、キミが好きなんだ。
だからだと思うけど
だからこそ、嫌われるのが。ものすごく怖いんだ。
「だって、アタシだって・・伊勢谷のこと大好きで、伊勢谷がアタシにしたいこと、アタシだって、したいって言いますか・・」
・・・・。
「伊勢谷と、あの、ギュってしたいし、き、き・・・キスもし、たいし、その・・ひ、とつに・・なりた・・」
「柊・・泣かないで・・ごめん。」
「ごめん、伊勢谷・・」
最後まで、聞きたかった。
彼女の、言葉。
だけど、そんなことより
触れたくて
抱きしめたくて
「ぅ・・・ごめ・・」
「謝らないで。嬉しすぎて・泣きそう・・」
「すごく好きで・・・わかんないけど好きで・・・」
「ん・・・」
「どうしたらいいのかわかんないのだよ・・・」
録音しておきたい
できれば、動画に撮っておきたいって・・
美人なくせに瓶底おさげで
珍獣なくせに驚異的なシンガーで
俺の次だけど秀才のくせに、天然で
男前のくせに、めちゃめちゃ照れ屋で
すごく変な子なのに、いつでも何に対しても真剣で
いつだって、俺の気持ちと、向き合ってくれるんだ。
「柊、落ち着いた?」
「ん、ごめん」
泣き止んだ彼女の身体をそっと離して、優しく微笑む。
「とりあえず、あの全く色気のないスウェット着ようか」
「・・やっぱり色気ないよね。ネズミ色だしね、ごめん。」
ねぇ、柊
そんなキミのことも、全部大好きなんだよ、俺。
「頑張ったね、柊。もしかして浜崎の入れ知恵?(笑)」
「アドバイスはもらったけど入れ知恵とかじゃないんだよ。でも頑張ったんだよ、これでも」
ねぇ、柊
そんなキミがいてくれるから、こんなに幸せなんだよ、俺。
「伊勢谷」
「うん。ちゃんと着たね(笑)」
柊と洋画を観るのは楽しくて
「今日は、どんなの観たい?」
寝ながら流すDVDのカテゴリを聞くと
「超いちゃいちゃなやつ」
「え?」
予想外の返答に驚いて、柊を見ると
「めったくそエロいやつ希望」
真顔で言うから、可愛くて吹き出してしまうと
「笑い事じゃないんだ、この伊勢谷王子め。」
怪訝そうな顔して、言う彼女。
「覚悟、できてるの?」
わざと聞く
「一緒のベッドでそんなの観たら、さすがに我慢できない。」
俺の予想は、彼女は
『できてるよ』
なんて言いながら、身体を震わせて不安そうな顔をするんだと思ってた
一緒のベッドで
一緒に寄り添って寝る
正直、生殺しもいいところ
それでも
一緒にいたいし
触れていたいんだから
諦めるしかない
不安そうな顔を見せてくれたら
今夜もまた我慢できる
死ぬ気で我慢しようって覚悟してたのに、だ。
今夜だって、生殺し覚悟な俺の予想を反して
柊 奏 って子は、堂々と言い放つ
「我慢なんていらないんだよ。セックスするんだから。繋がるの今から。」
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