四.

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「それは……、なんとも言えない、かも。僕はそれでもいいけど」 「まぁ……ほとんど冬に近いしな。寒いのが苦手ならおすすめしない」 「あはは、ありがとう。いいなあって思うと、すぐ影響うけちゃうんだ」 「隣の芝生は青いってやつか」 「なにそれ?」 「他人のものがよく見えるってことだよ」  シンの質問に、クスクスと笑いながらクータが答える。なんとなく、この空気感が好きになりはじめていたし、穏やかな口調で、何を聞いても答えてくれるクータを、シンは信頼しはじめていた。  と、クータがポケットから小さな円形のものを取り出す。針が三つあり、ひとつは動くことなく、もうひとつはゆっくりと、そして一番短いものはカチカチと動いでいる。――時計だ。 「今は……まだ大丈夫か」 「どうしたの?」 「出発まであとどのくらいか、っていう確認。さっき、時間の概念はない、といっただろ。だから、この世界では“針が回る回数”が時間だ。この短い方が、ね」 「へえ。時計の見方なら分かるよ、短い方ってことは……一時間も待つの?」 「ふふ。君にとっての一時間は、ここでは違うんだ。ああ、それより早くリゲルとベテルギウスのところに行こう。遅れるとアクアスに怒られてしまう」  星見列車を降りるときに、二人の前にあらわれたあのロボットだ。クータが、車掌ではあるが動かすのは自分だ、といっていたことを思い出したシンは気遣うようにうなずく。 「そうなんだ。クータみたいに、小さな子でも働かないといけないんだね」 「小さな子?」  きょとんとする彼に、また言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれない、という思いで、シンがあわてる。 「あれ、やっぱり大人? ごめん、僕……」
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