四.

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「ああ、大丈夫。気にしないでくれ。ただ、車掌をやらざるをえなくてやってるだけだ」 「えっ? な、なんだか大変だね」 「そうだな、楽しいこともあるよ。たまに、シンみたいなやつを相手にすることがあるからね」  笑っていうものだから、本当に面白がっているようにも聞こえる。 「……それは、楽しいの?」 「楽しいとも。車掌なんて、本当なら星見列車の中か駅舎にいるか、くらいだから」  連れ出してくれてありがとう、と言っているようなものだった。なかば気恥ずかしくなるシンに、クータが前方を示す。 「ほら、そろそろつくよ。月見の丘っていう、月を見るにはうってつけの場所があるんだ」  そこには、駅と同じくらい高台にある展望台へと続く、石の階段があった。
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