五.

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「ああ。周りに誰もいないからといって大声で話すのはやめておけ。誰か通りかかって聞こえたら彼みたいにびっくりしてしまうだろう」  クータの視線と一緒に、リゲルとベテルギウスがシンを見る。かたまってしまう彼の様子を見て、ベテルギウスが目を細めた。 「そうはいっても、クータさん。その方はわたくし達の美貌に見惚れているようですけれど」 「え、あ、えっと……」  からかうような口ぶりに、どう返事をすればいいものかとしどろもどろになる。それを見たベテルギウスは、シンの顔をよく見ようとさらに迫った。  長いまつげ、淡い光に照らされる艶のある金髪がさらりと流れる。 「かわいらしい方ね」  柔らかい高めの声でそういわれ、シンの顔は真っ赤になってしまった。 「えっ、えーと……クータ、助けて……」 「ベテルギウスは子どもが好きなんだよ」  上ずるような声でクータにすがるも、彼は面白そうにその様子を眺めている。助けるそぶりはない。代わりに、リゲルが間に入った。 「おい、困ってるじゃねえか。子どもをからかうな」 「まあ。つまらないわ」 「うるせえよ」  仕方ないわね、とばかりにようやくベテルギウスがシンの顔を見るのをやめた。 「コイツは危ないって分かったろ。お前は、クータ……さんの後ろに隠れておけ」 「リゲル。呼び捨てで構わないよ」 「お、そうか? 分かった」 「それから、彼の名前はシン。お客さんだ」  ようやく名前を紹介されて、シンはクータの腕にしがみつくようにしながら、ペコリと頭を下げた。 「こ、こんにちは」 「やだわ、今は“こんばんは”。星見列車で夜を走ってきたのでしょう、太陽のことなんて忘れてちょうだい」 「どっちでもいいじゃねえか、細けぇな」
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