五.

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 ベテルギウスの発言にたいし、リゲルがぼやくと彼女はしっかり聞いていたようで、今度は彼の方へと半ば詰め寄る形で近づいた。 「そういうのがだめなのよ。いい? 礼儀というのは長年の積み重ねなの、慣れが出てくるのよ」 「二人とも、お客さんの前でやめないか」 「はぁい」 「仕方ねえな」  また先ほどみたいにヒートアップして言い合いが始まるかと思われたが、すぐにクータが止めたことで、それ以上のことは起きなかった。  シンからすれば、その光景はまるで、大人が子どもに叱られているもののように見えてしまい、苦笑いを浮かべる。  そうやって笑うつもりで瞬きをしたとき、電線が切れるような音が聞こえた。そして、誰かの声が耳に響く。 「……は……早……てちょうだ」  それは一瞬で、シンは驚いて目を開く。そこには、先ほどまで一緒だったクータやリゲル、ベテルギウスもいない、彼だけが暗闇の中に立っている状態。 ――っ!? 今の……何? 誰かの声が……。 なおも、かすかに聞こえてくる。
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