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見た目に似つかわしくない、大きめの制帽をかぶった、アメジストのような紫色の瞳をした少年だ。水色の明度を落としたような、落ち着いた色合いの制服を着ている。黒のネクタイは、星の形をしたタイピンで留められていた。光を受けて、金色が少しきらめく。
「お客さん、終点だよ」
今度こそ起きてくれ。そんな思いと一緒に、彼が今度は力強く眠っている少年の肩をつかむとゆらした。
「しゅ……て……、終点……?」
その気持ちが伝わったのか、今度は眠っていた少年の目がゆっくり開く。――かと思えば、そのまま勢いよく、そして大きく目を見開くと、ガバリと起きあがった。
「お、起きた。終点、わかる? 最後の駅」
「え……、えっと、終点、最後の駅……、ということは、電車?」
ぱちり、と目をひらいた少年はキョロキョロとあたりを見回した。確かに、よくある電車のボックス席だ。右側の窓からはホームが見える。黄色の点字ブロックはないけれど、コンクリートらしい灰色は見えるし、なるほど看板もある。駅であることに間違いはなさそうだった。駅名をよく見ようとした少年に、制帽の彼が不思議そうに声をかけた。
「あれ、もしかして覚えてない?」
「えっと……」
看板を見るのをやめ、目の前の少年へ視線をうつす。やがて、こくりと一度うなずいた。
「……はい」
戸惑うような口調で、不安げな表情。ここに来る者は、そういった表情をする者も少なくない。
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