五.

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「ねえ、知ってるなら教えて。全部。僕が、どこに行こうとしていたのかも」  じっ、と目を見つめる。そのまなざしを受けた彼がため息をついた。 「……、あのね。教えることなんて簡単なんだよ。言うだけだから。でも、それを受けいれられるかどうかは君次第だ。俺はまだ、君にその勇気があると判断できない」  冷たい、しかしシンを気遣っての言葉。 「……そう。車掌さんだっていうから、優しいと思ってたのに、案外いじわるだ」  シンは理解はしているものの、口をとがらせて分かりやすくすねてしまった。ベテルギウスが微笑む。 「ご心配なさらず。クータさんはいつもこんなふうですよ」 「そうそう。子どもみたいな見た目の割に中身は全然違うんだ」  シンに対してフォローのつもりで二人がいうが、今度はクータが不機嫌そうな表情になった。“子どもみたいな”というような表現を嫌うのが彼だ。 「余計なことは言わないでくれるかな」 「はいはい」 「外見は情報のひとつにすぎないといつも言ってるだろ。見た目で判断していいのは初めて会ったときだけだ」 ――見た目。
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