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先ほどの、街中での会話を思い出す。
―『そうなんだ。クータみたいに、小さな子でも働かないといけないんだね』
―『小さな子?』
やはり言ってはいけなかったんだ。そう思ったと同時に、また女性の声が聞こえた。
「子供は黙ってなさい!!」
今度は確実に声がした。その声の主は――母親。
――おかあ、さん?
そうだ。母親がいた。父親もだ。しかし、なぜ自分は怒られたのだろうか。
――思い出せない。
数分前とは違い、空間は変わらないままだった。景色がちゃんと見える。そこに、軽快なメロディが鳴った。
「ああ、俺だ。ちょっとごめん」
クータがそうことわり、四角いものをポケットから取り出す。
「はい、クータ。……ああ、分かった。発車時刻までには戻る。じゃあ、また」
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