六.

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六.

 来た道を戻り、駅舎へと戻る途中。シンは、隣にいるクータに話しかけた。 「そういえば、クータ」 「なんだい?」 「ここは星の都、なんだよね。なのに月が見えるんだね。ふしぎ」 「ああ……、月は別格だから。俺は、嫌いだけど」 「そうなの?」  うん、と静かにうなずく。珍しく、クータの表情にかげりが見えた。 「月がなかったら、この町はもっと、暗くなる。こんなに明るくなくていいんだ。本当は……」 「それは……どうして?」 「終点、だから。それ以上でも以下でもない」  やけに意味深長な言葉だが、彼の冷めた口調に、シンはそれ以上聞くことができなかった。終点、つまり、終わりの場所。月の光は明るい。照らされることを、クータ自身が嫌っているようにも思えた。 ***
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