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制帽の少年は不安を除こうとするかのように、少しだけ微笑んだ。
「そう。……そんな顔しないで。大丈夫」
「は、はい」
優しくそう話してくれるものだから、眠りから覚めた少年は思わず、すぐに返事をしていた。
「んー、でも切符は持っていたしなぁ……。てっきり、終点が行き先なんだと思った」
微笑んだままで呟く。
「終点って、ここはどこ……ですか?」
不思議そうに尋ねる彼に対し、制帽の少年は、白い手袋をした手をすっ、と窓の方へ差し出した。
先ほど、途中で見るのをやめた駅名が書かれた看板だ。細めの線で、曲線が多めの丸っこいフォントは、かわいらしさを感じる。
「星見列車の終点、オリオン星宮へようこそ。ここは、星の都の中で一番大きい都市さ」
彼の低めな、心地よく耳に残る声が優しく告げる。
そう、眠ってしまっていた少年――“シン”は、いつの間にか電車に乗って星の都であるオリオン星宮へと来ていたのだった。
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