六.

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 そこまで考えたところで、やや大きめのベルの音が鳴った。 「シン様、できました。こちらを北斗星宮の駅でお見せください」 「はい」  切符の処理が完了した音だった。受け取り、しまおうとして気が付く。 「あ、切符ホルダー……」  借りたもの、と思っていたシンは、このまま使っていいのかと手が迷子になる。ミシャがいいんですよ、と優しく声をかけた。 「差し上げたんですから、そのまま持っててください」  ね、といわれ、シンはしばらく呆然としたものの、すぐに笑ってうなずいた。しっかりと、お礼の言葉もそえて。 「ミシャ……さん、ありがとう!」  切符を手にしたシンがいえば、彼女も元気よく答えた。 「はい! よい旅を!」  その明るい声は、シンの背中を押してくれるような力があった。
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