七.

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七.

 星見列車に戻った二人は、並んでボックス席に座っていた。通路側にクータ、窓側にシン。他の乗客は――いない。終点であり、始点であるからだろうか。 「クータ、車掌なのに、僕の隣に座ってていいの?」 「運転は自動だから問題ないよ。さっき、ちゃんとスイッチを入れてきたから」 「そっか。……僕、少しだけ思い出したよ」 「ふうん?」  どんなこと、というように、彼が顔を動かす。 「……お母さんに怒られてた。子供は黙ってなさいって」 「……、親が、喧嘩してた?」 「たぶん。でも、だめ……お父さんのことが思い出せない」 「そうか」  短く相槌をうつだけで、それ以上は言おうとしない。  明らかに母親は怒っていた。自分に対して。あのシーンを忘れていたことのほうが不思議なくらいに、とても強い印象だった。
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