七.

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「……あ、ここは先頭だった」  視線を動かして、そういえばと気が付く。クータが後ろへ歩いて行ったのは車掌室が後方にあるからであろう。 「クータが、星見列車のことを教えてくれたっけ。車両は五個で……木でできてるのかな、椅子とか茶色い」  一人の空間で、一人ぐるりと視線を動かして見渡す。寝てしまうまで、自分が何をしていたのかはまだ分からないが、ある思いが芽生えてきたのは本当だった。 ――僕、帰りたくないな。  帰る。どこへ?  おそらく、シン自身の家へ。居場所へ。でも、クータがいるココは、居心地がいい。彼が面倒を見てくれるから、とか、いつも見上げていた夜空に近いものがあるから、とか、様々な理由をつけることができる。  そうやってまで、帰りたくない気持ちが、次第に存在を主張しはじめていた。
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