八.

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「も、もう起きたよ、大丈夫!」 「……そう?」 「うん!」  むりやり自分を起こすシンを見て、クータは面白そうに微笑んだ。 「そこまで無理しなくていいのに」 「で、でも、着いたから……」 「そうだね。じゃあ、シリウスのところへ行こうか」 「うん」  こくり、とうなずき、クータに連れられて席を立つ。またこの列車に戻ってくると、そのときは思い込んでいた。 ***  改札に立っていた駅員に切符を処理してもらい、駅を出る。  駅舎の外は、オリオン星宮とは違い、やや薄暗い。しかし、真っ暗というわけではないから、ゆきかう人の姿があることは、よく見えた。  階段を下りながら、クータが顔で街の方向を示す。 「ここが北斗星宮だ。オリオン星宮より、よその都市から来た人が多いんだ」  オリオン星宮同様、駅は高台にあった。階段を下りた先が、街への入口。薄暗く感じるのは、先ほどよりも、月光の量が少ないからだと気が付いた。 「……空気がすんでるからか、街灯が星みたいにきらめいてて……夜空みたいだ」 「景色がすごくきれいだから、観光地になったくらいだしね」  よっ、と最後の石段をおり、二人は並んで立つ。 「シリウスさんという人は、どこにいるの?」 「この先にある、星馬車に乗れるお店だよ。彼しか、星馬車を操れないんだ」 「へぇ……?」 「行こう」  いつもの優しい声でそういい、シンを先導するようにクータが歩きはじめる。彼も置いていかれないようにと、先行く背中を追いかけた。
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