九.

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九.

 歩きはじめて少し、とある店の前についた。パステルの紫色をした屋根、クリーム色の壁をした建物は、メルヘンな雰囲気ながらフルーツケーキのようなかわいらしさもある。 「ほしばしゃ、きっさてん……?」  看板にある文字をそのまま読む。 「そう。この店で受付をしないと乗れないんだよ」 「な、なるほど!」  クータがドアを開ける。カランカラン、とドアについている大きめのベルが鳴った。  右手側にあるカウンターに人影が見える。その黒い影はゆっくり動いた。天井からつるされた、星型のランプの光に照らされて、顔が見える。 「いらっしゃいませ~」  ゆる~とした声、のんびりとした言い方をしたその青年は、クータを見て、お、と小さく声をもらした。 「クータだ。こないだぶりだね」 「ああ。他の客はいないのか?」 「うんー。ちょうどね。閑散期ってわけじゃない、けどさぁ」 へらへらと笑う、ソーダ色のような髪をした彼がシンに目を落とす。
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