二.

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「敬語じゃなくていいよ。その方が話しやすいだろ?」 「あ、うん、じゃあ、えっと……それで」 「うん。でね、君も分かっている通り、とりあえず降りてもらわなくちゃいけない。掃除や点検をしないといけないからさ」  ごめんね、というように彼が言う。シンは大人しくうなずき、切符を手にしたまま立ち上がった。  その時に初めて分かったが、制帽の少年の背丈はシンより少し高いくらいで、さほど変わらない。目線は同じ高さだ。それでも、彼が大人びて見えるのは、その雰囲気なのだろうか。 「ね、ねえ」 「ん?」 「君は、えっと、この列車の……運転士さん?」 「……、ふふっ、違うよ」  一瞬きょとん、とした彼はすぐに満面の笑顔になった。 「俺の名前はクータ、この星見列車の車掌だよ」  くいっ、と制帽のつばを押し上げて、目をはっきりとシンに見せる。宝石のように輝く紫色の瞳に、思わずシンは見惚れた。 「君の名前は、ナミヤシンくんっていうんだよね」 「えっ」  驚いて、目を見開く。 「なんで、僕の名前」 「俺は車掌だから、君のことは分かっているよ」 「こじんじょうほう……」 「あはは! 切符をよく見てみなよ。書いてあるから」  面白そうに笑うクータにいわれ、切符を見ると、小さく“ナミヤシン”と書いてあった。 「僕の名前……、本当だ」 「そうだろう。その切符には、持ち主の名前が書かれるようになっているからね」  そうはいわれても、と戸惑う。シン、だけならまだしも、ナミヤ、という苗字まで刻印されるものだろうか。
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