1人が本棚に入れています
本棚に追加
三.
降車したクータとシンは、改札へとやってきた。そこには、クータの制帽にある星とは色違いのそれがついた制帽、そしてリボンタイをした女性が立っている。
薄い緑色から青色へのパステルカラーのようなグラデーションとなっている髪色は、シンにとって初めて見るもので、一瞬驚いたものの、
「あ、クータさん! お疲れさまです!」
と愛らしい笑顔で挨拶をする彼女に、こわばった表情は元に戻った。
シンはクータの横に並んで立つ。彼女の好奇心がそのままうつったような桃色の瞳は、くりっと丸い形をしている。
「お疲れ様。シン、紹介するよ。彼女はオリオン星宮の駅員、ミシャ。ここに就任してからまだ日は浅いけど、しっかり者で頼れる存在だ」
「はじめまして、ミシャという名で生を受けました。よろしくお願いいたします」
「は、はじめまして……、ナミヤシンといいます」
――生を受けました?
これまでそういう自己紹介の言葉を聞いたことがないシンは、正直“?”と思いながらも、あえてそこにはふれずに、自身も名乗る。
ミシャはにこり、と目を細めて笑った。
「シン様ですね。ようこそ、オリオン星宮へ」
「は、はい」
ミシャの笑顔にやたらと気恥ずかしくなってしまったシンは、ドキドキしはじめた心臓に気がつく。そんな様子を見抜いているのかいないのか、クータはただ微笑むだけで、シンの左肩をポンポンと二回優しく叩いた。緊張しないでいいよ、の意だ。
最初のコメントを投稿しよう!