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Freude trinken alle wesen anden br üsten der natur;
オリュンポス山におわす大神ゼウスには悩みがあった。地上にこしらえた愛人との間の子のことである。ゼウスが地上に愛人を作るのは日常茶飯事、しかし、今回作った愛人は本気で愛してしまった。その愛人の名はアルクメネ、人間である。
神々と人間との間に生まれし子は「英雄」と呼ばれ類まれなる力を得ることが出来る、しかし、神々が持つ「不死身」の体を持つことはない。ゼウスがアルクメネとの間に作りし子、アルケイデスは類稀なる怪力を持つことが発覚した。ゼウスはその子が「不死身」ではないことを不憫に思う。
そこで、自らの妻であるヘラに頼み事をするのであった。
「なあ、ヘラ。アルケイデスにお前の乳を与えてやってはくれないか」
ヘラの母乳には飲んだ者を不死身にする力がある。ゼウスはアルケイデスを不死身にするためにヘラに母乳を分け与えることを頼むのであった。
アルクメネはゼウスがヘラの目を盗んでこしらえた何人目かもわからない愛人。そんな愛人の子を「不死身」にする筋合いなど全くない。むしろ、アルケイデスを手に掛けて「ゼウスを受け入れると酷い目に遭う」として晒し上げてやりたいぐらいであった。現に毒蛇をアルケイデスの元に送り込んでいるところ(結果は失敗)、その憎しみは本物である。
「私の乳は三人の子とあなただけのものです! 見も知らぬ子なぞに私の乳を吸わせる義理はありません!」
「そんなこと言わないでくれよ、ヘラ」
「知りません!」
ゼウスがいくら頼んでもヘラは頼みを聞き入れない。そこで自らの娘アテナの知恵を借りることにした。
「私にいい考えがあります」
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