通り魔殺人

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 西園寺は、手元のスマートフォンを片手で操作した。ザッ、ザッいう足音を立てながら、奇妙な女が姿を現した。動きだけ見れば、人間のように見えるが、その顔には目や鼻がなくい。皮膚感は女性だが、裸で顔がないため、マネキンが動いているようにしか見えない。 「ノッペラボーか。しかし、動きだけ見れば普通の人間と同じだな。これを、『イザナミ』に入った脳が動かせれば、完全成功だ」  伊澤はその動くマネキンを凝視したり撫でたりしてみた。 「まあ、顔はあとから作ればいい。お前が言う『無念の思いを残して死んだ人』の身体になるんだ。なかなか良い出来栄えだろう」 「さすが、世界最高のロボット工学者だけはある。これに、那美の作った新型電池を入れれば、二十四時間稼働できる」  伊澤奈義雄と西園寺為朝は、小学生の頃から競い合ってきたエリート中のエリートで、日本最高レベルの帝都大学に現役で合格し、二人とも研究者の道を選んだ。伊澤が医学部、西園寺が工学部である。
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