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その日の内に国中の医者や学者が集められ、アベルに起きた謎の現象について調査されることになった。そいつらが何をしているのか、王宮内にいる人間にも秘匿にされている。だが、噂では一歩進んでは二歩下がって、と難航を極めていると聞く。
第二王子が原因不明の眠りについている。それだけでも一大事なのに、日々を重ねていくにつれて、雨が降りつづいていることへの弊害が徐々に出始めた。聞いた話では、国外れにある川が洪水しかけているとか。
俺も、何度も話を聞かれた。王子に何かおかしな兆候は見られなかったか。変なものを食べたり、妖精と話しているところを見たりしなかったか。答えはノーだ。なにより、見つけた俺が一番驚いたのだ。そんな俺の中に、アベルを起こすヒントはどこにもない。
ヒントになるかもしれないもの、はあるけれど。
俺は自室に戻ると、鍵のかかった机の引き出しを開けた。そこには、アベルと二人で映った写真だったり、アベルから貰ったプレゼントだったり。俺はそこから手紙を取り出した。
もう、開かなくても覚えている。中には一言、ごめんねと書かれている。貰ったのは、謎の眠りにつく前日。何故、アベルは謝っているのか。明日聞こうと思って、結局まだ聞けないまま。だから、理由もわからないままだ。
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