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店内は意外に広く
黒檀の古い中国家具、赤いランタン。
2人は気に入りの紹興酒と
理世の好きな翡翠餃子、泰章の好きな小籠包を注文する。
小さな蒸し籠に入った小籠包が運ばれてきた。
肉厚の皮の中に
薄ピンクの肉の塊が透けて見える。
泰章は、待ち兼ねたように、それを箸で蓮華に乗せた。
骨のしっかりした長い指が、箸と蓮華を巧みに使い
柔らかい白い皮をそっと破くのを
理世は、うっとり眺め、味わう。
こんなに生き生きとした、しなやかな男が
今、目の前で、自分を切なげに見つめることを。
そんなことに気にもとめず
泰章は、溢れた熱い汁に唇を寄せて啜った。
理世の好きな翡翠餃子は青磁の中で
澄んだスープに沈んでいる。
子供の耳を思わせる形。
青菜が練りこまれた半透明の翡翠色に
エビのすり身と真っ赤なクコの実が透けている。
まるで、古池に金魚を覗くようだ。
1つすくって口元に近づけたとたん
理世は、うっと、えづいた。
もちろん泰章に気づかれぬよう、直ぐ下を向いたが。
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