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この花の
すんなりした形も
すずし気なブルーも好きだった。
細く伸びた花茎には葉の一枚もつかず
ただ花をいただいて、すっくと立つ。
その潔さも気に入っていた。
長い茎の頂点で、小さな花の集まりは
夜空ではじけた花火のように
細い茎で放射状に広がる。
この花は特に
未明と、黄昏の光で見ると
不思議な魅力がある。
花弁が輝くように見えて
儚げでいて、強い印象が残る。
時計を見た。
泰章(やすあき)との待ち合わせ時間は10分過ぎていた。
地下鉄で一つとなりの麹町の喫茶店で
見てくれに似合わず
時間に律儀な泰章は
あと15分、理世を待つ羽目になる。
「あの店に、泰章は全然、似合わない…
居心地悪そうにしてるわ、きっと」
そう想像すると可笑しい。
理世はゆっくり、東京メトロの階段を下りて行った。
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