サマーブルー

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カフェでも喫茶店でもない。 「ティーラウンジ」と呼ぶのがぴったりな店。 アンバーカラーのガラスドアを入ると薄暗い店内 靴が沈むほど厚い、深紅の絨毯が敷き詰められている。 ビロードと大理石と銀。 壁には、貝殻を伏せたようなデザインの銀の間接照明が 柔らかな黄色い光を放っている。 店の中央、大理石の花台に カスミソウが一抱えも生けてあった。 その、煙のように白くかすむ花霞の向こうに 泰章の、のんきな横顔が見えた。 無防備な表情、まだ青春の匂いが十分残っている。 男の36歳は、まだ半分子供 51歳の理世には、そう思える。
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