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瞼がピクリと動く。私は飛び起きた。
辺りを見回すとそこは相変わらず暗くてじめじめした場所。だが私を責め立てる声は聞こえなくなっていた。
(子供の頃の記憶···)
汗で肌着が張りついていて気持ち悪い。
(夢の中で目が覚めて、また目が覚める。どれが現実か分からなくなりますね···)
少し頭が混乱しているようだ。肌着を変えたいなと思って、自分の状況を思い出す。途端に血の気が引いた。廃墟に閉じ込められたまま、打開策を打てず夜を迎えたのだ。
(廃墟に閉じ込められてそれで、異形···ええっと、何かがあって···そうだメアリーさん!)
確か眠る前に異変があった。甘い香りに包まれて急に頭が重くなって、そこから意識がない。眠ったのではない。意識が勝手に落ちたような間隔。
思い出した途端、もう十分体は冷えてるのに更に嫌な汗が出る。
慌てて立ち上がると同時に、体に纏わり付く何かに気が付いた。霧のようなものが私の体の動きを鈍くさせる。こんな感覚を体験したことがある。
(_____黒霧だ!)
「フェデ君!!」
必死だった。彼を起こして逃げなければ。
隣で眠る彼を揺さぶると、生温い液体がついて私は悲鳴を上げる。血かそれとも別の何かか。暗闇で判断できない。
その悲鳴に反応したのか、フェデ君を挟んだ向かい側で霧が動くのを感じた。
____すぐ近くに、異形がいる。
「···ちゅう?」
私はフェデ君の腕を全身全霊で引っ張った。
「まってまって脱臼しちゃうよ!え、何事!?」
「後で説明しますからとりあえず走ってください!この霧から動けなくなったら助かりません!」
フェデ君はそこで初めて私達を包む異質な空気に気が付いたようだった。
一度立ち上がってしまえば彼の方が速い。
「逃げるってどこがいいの!?」
扉を開けたフェデ君が叫ぶ。
正直、閉じ込められた廃虚の中で逃げても袋の鼠でしかないだろう。
それでも本能は悪あがきをする。
「出来るだけ壁の厚い部屋で、少しでも頑丈な所!」
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