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「······」
そっと襖を開く。畳の匂いが鼻を掠める和室。文机に額をのせて、スヤスヤと寝入る幼い童子がいた。
(忠ってばまた寝落ちしてる)
敬はそっと部屋に入る。音を立てないよう注意して襖を閉めた。童子の頭の下敷きになるように文机に広げられていたのは西洋の物語が描かれた絵本。
随分夢中になっていたのか、周囲の畳には沢山の和紙が散らばっていた。それらはぜんぶ絵で、絵本のワンシーンが描かれている。
(忠は絵を描き出すと、ずーっと夢中になってるからなぁ)
それらを広い集めつつ、敬は弟に声をかけた。
「ちゅーう、忠?起きて。そんなところで寝てたら風邪を引いちゃうよ」
「んー······」
忠が夢うつつな様子で目を開けた。
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