笑面夜叉

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笑面夜叉

▶side???  『光のあるところには必ず影ができる』とはよく言ったものだね。なかなかその通り、尊敬するよ!誰が言ったのか知らないけど。  植民地を広げ、東インド会社を設立。そして眠れる獅子と恐れられていたかの国を倒してから数十年。不思議なもので、この英国は今や世界の覇者となっているらしい。  七つの海と大陸を制覇した国__  世界の工場__  そんな栄光ある名前がつけばつくほど影も濃くなる。俺たちはきっと、世界の覇者が見ない振りをしている闇の部分。 「久しぶりに来たけど、変わらないなぁここも」  プレハブ小屋のような建物が区画も何も整備されず乱雑に建ち並ぶ。まるで迷路のようになってしまったここは初めて来た人ならまず迷うだろう。陽気な鼻歌を歌いながら、俺はさらに細い路地裏に曲がった。迷うことはない。だって俺はここで育ったのだから。  いい夜だ。空から満月が覗いている。工場のスモックのせいでぼんやりとしか見えないけど。  ここはロンドンの一角、イーストエンドにあるホワイトチャペル。所謂、貧民街。大英帝国の影が具現化したような場所だ。ロンドンの人々はイーストエンドを貧困、人口過密、病気、犯罪を意味して使う。俺にとっては故郷って意味なんだけどね。  ああ、言い忘れてた。俺の名前はフェデリーコ・ラファエーレ。皆からは「フェデ」って呼ばれてるよ!
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