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星空
母のことに関しては、ずっと後悔していた。
警察の許可をとって、妹と二人であちこち調べたが、自分で命を絶つような理由が見当たらなかった。
部屋にあった特殊な仏壇は、ただの木箱のように見えるのに400万円だと聞いた。
その仏壇の代金が、母を苦しめていたのではないか?と思われたが、それも確証はない。
家を出て1人で生活していた母が頼った宗教。
私が連絡を絶ったから?
それでも、1人で生活する母に友達(?)として宗教の仲間がいたのなら、それはもう仕方がない。
その宗教の偉い人に、その仏壇を返却した。
母は、遺影のための写真を用意し、連絡先も遺書に書いてあった。
『福子には連絡しても来てくれるかわからない』
たった一言、それだけ書かれていた。
後悔と自責の念を抱えたまま過ごしていた私は、ある日、自動車事故を起こした。
母に起こされる夢を見て、意識を取り戻し、さらにその夜不思議な夢を見た。
私が眠る和室のドアが開いて、そこに母がニコニコしながら立っていた。
母の姿に気づいた私は、謝らなければ!と強く思っていたのに、口をついて出た言葉は
「ありがとう、産んで育ててくれて、ありがとう」
母は何も言わずに、ニコニコしたまま消えていた。
私は泣きながら目を覚ました。
カレンダーを見て気づいた、母の四十九日だった。
その一年後に祖母が亡くなり、数年後に父が亡くなった。
父の葬儀の時、夫と妹の旦那さんが受け付けをした。
その少し後、妹の旦那さんは単身赴任先で孤独死したが、妹は再婚し今は穏やかに暮らしている。
「よっこらしょっと」
クロを抱き上げながら、ベランダの手すりにもたれた。
もっと星を見たくて。
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