父の記憶

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今ならわかる。 父の悔しい気持ち。 思うようにならない体、見えない目、頭が割れそうなほどの痛み。 祖母の息子としても父親としても、やりたいことが何もできない。 それからの父は、起き上がれる日が少なくなった。 早く死んでしまいたいと、ご飯を食べなくなった。 ある夜、チビと夜空を眺めていた時にそっと横に父が並んで空を見上げた。 「立てたと?大丈夫と?」 私の問いかけには答えず 「人間なうっちねば星んなっとぞ」 (人間は死ねば星になるんだぞ) そう呟いた。 ふと今にも死んでしまうんじゃないかと思った。 でも、先に星になったのは母だった。
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