31人が本棚に入れています
本棚に追加
帰りのフェリー。
夫と子どもたちはもう寝ている。
私は一人で甲板に出た。
離婚届けを書く父の姿と涙を思い出し、堪えきれず涙が溢れた。
フェリーのエンジン音に紛れて、声を出して泣いた。
吐き気がするほど泣いたのは、この時が初めてだった。
それからしばらくして、父と弟は同じ病院に入院した、というか入院させた。
弟は山に入り自殺未遂を繰り返し、その度に地元の消防団にお世話になった。
父は歩くこともままならなくなっていた。
そんな二人を祖母がみていたが、祖母も動けなくなり介護施設に入った。
弟の症状について病院から『母親の愛情不足かもしれません』と言われたので
病院にお見舞いに行ってほしいと何度も頼んだが、頑なに拒まれた。
そんな母に対し、私は怒りをぶつけ絶縁状ともいえる手紙を書いた。
そしてそのまま連絡を絶った。
それでもそれぞれが落ち着いたと思われる頃、新しく買ったばかりの携帯が鳴った。
『福ちゃん、お母さんが死なしたとよ、早よ帰ってきて!』
「え?死んだ?」
最初のコメントを投稿しよう!