夕涼み

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夕涼み

「クロも行く?」 晩御飯を食べて、汗をかいたのでベランダで夕涼みをしようと二階へ上がろうとしたら、足元に絡みつくクロ。 猫のクロが付き合ってくれるらしい。 「ふぎゃっ!」 うっかりクロの尻尾を踏んでしまった。 「あ、ごめんごめん、クロの尻尾は長いから」 それでも離れることなく、ベランダに置いたベンチに座る私の横に座り込んだ。 「蒸し暑いね、クロ…」 クロは後ろ足をピーンと上げ、毛づくろいを始める。 「今日はちょっと疲れたよ」 何がどうなってどう疲れたのか忘れたけど、つい口をついて出る『疲れた』。 毛づくろいに夢中のクロに言っても仕方ないんだけど。 見上げれば、梅雨だというのに満天の星。 ふと思い出した。 ➖人間な、うっちねば星んなっとぞ➖ (人は死んだら星になるんだよ) そう言って私に、空を見ることを教えてくれたのは父だった。
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