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「やまない雨はないよ」
とても激しい雨が降っていたその日。
僕は彼女にそう言って、粘つくほどに湿り気を帯びた肌を傷付けぬよう優しく抱いた。
これは僕にとっては一夜の夢と等しい出来事であり、雨がやんだら彼女の下を出ていくつもりだった。
*
それから三年の月日が流れた。
雨はまだ激しく降り続いている。
僕たちの間に出来た子供は一歳になろうとしている。
一度も日の光を浴びたことのない子供の肌は白く濁っており、水を吸いすぎてふやけた体から滴る粘液が、這い這いの度に畳に染みこんでいく。
そんな子供を見ていると、思う。
もしも雨がやんで日が差し込み、その光を浴びたら、この子供は干からびて死んでしまうのではないか?
もはや愛しさ以外の感情を持ち合わせていない僕は、三年前に彼女に言った言葉を撤回し「どうか雨よやんでくれるな」と、日に三度、子供の為に天に向かって祈るのだった。
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