あなたの顔が

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
足下にできた血の海が、瞬く間に洗い流されていく。 雨の音が、俺の耳をじわじわと(つんざ)いてくる。 もうやまないのではないかと錯覚するほどに、いつまでも。 どうして選んでくれなかったのだろう。 あなたが堕ちるなら、運命を共にしたのに。 あなたと出会って、戦う以外の喜びを知ったのに。   あの時、あなたは泣いていたのだろうか。笑っていたのだろうか。 それとも……分からない。 叩きつけるような雨に遮られて、あなたの顔が、よく見えなかったから。 それが、あなたを見た最後だった。 だから俺は、雨が憎い。憎くて、憎くて仕方ない。 選ばれないなら、せめて、あなたがどんな顔をしていたのか見たかった。 あなたの気持ちを、知りたかった。 あなたを前にすると熱くなるこの気持ちを、理解したかった。 あなたの傍に、いたかった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!