遠くを見るには早すぎる

　黒と青が混ざり合った海色の空に、砂を散りばめたような淡い星が光っている。
　夜の草原は虫の声がうるさいくらいに静かで、風が清流のごとくさらさらと吹いていた。

　その中央の踏み固められた茶色い土の上を、少女を乗せたやけに大きなイノシシが一頭歩いている。

　少女は薄汚れた白の着物に紫の袴を履いていて、両袖は肩口から完全に切り取られていた。理由は単純で夏で熱いから。細い腕が覗く。長い黒髪も後頭部の高いところでひとつに結ってある。

　そして腰には少女と不釣り合いな長い刀が一本、差してあった。