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カザリは即座に刀の柄に手を添えて丘のほうを睨んだ。
「ひとりかな。イノ、見える?」
「うん。そうみたい。あ、こっちに気がついた。なにか叫んでいるみたいだけど、どうする?」
「うーん。引き返すには食料が足りないし、無視して行くのも……。危ない人かなあ」
「それはわからないけど、なにか大きい道具がその人の近くにあるよ」
「道具?」
「そう。あれはたぶん……望遠鏡かな。この地域にあるのが驚きだけど。技術力的に」
「望遠鏡ってなに?」
「星とか、遠くを見る道具」
カザリが首を捻った。結った髪が後ろで揺れる。
「それって人を殺せたりする?」
「ボクの知っている望遠鏡にそんな機能はないね」
「わかった。じゃあ、行こう」
「あいよ」
カザリはイノから降りて人がいる丘のほうへと歩いて行く。
草履がよく茂った雑草を踏みつぶしていった。
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