遠くを見るには早すぎる

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 カザリは即座に刀の柄に手を添えて丘のほうを睨んだ。 「ひとりかな。イノ、見える?」 「うん。そうみたい。あ、こっちに気がついた。なにか叫んでいるみたいだけど、どうする?」 「うーん。引き返すには食料が足りないし、無視して行くのも……。危ない人かなあ」 「それはわからないけど、なにか大きい道具がその人の近くにあるよ」 「道具?」 「そう。あれはたぶん……望遠鏡かな。この地域にあるのが驚きだけど。技術力的に」 「望遠鏡ってなに?」 「星とか、遠くを見る道具」  カザリが首を捻った。結った髪が後ろで揺れる。 「それって人を殺せたりする?」 「ボクの知っている望遠鏡にそんな機能はないね」 「わかった。じゃあ、行こう」 「あいよ」  カザリはイノから降りて人がいる丘のほうへと歩いて行く。  草履がよく茂った雑草を踏みつぶしていった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加