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「本当に君は最期まで私を楽しませてくれる」
先に神様が鳥居を通る。
あとに続いて私も通ると、途端に眠気に襲われた。
苦しさはない。
けれど、この眠気に負けたら私の人生は幕を閉じるのだろう。
わかっていても私は、逆らうことをせずに素直に目を閉じてしまった。
両親は娘を事故で失った哀れな者と演じるのだろうか。
兄は私が死んで悲しんでくれるだろうか。
私をイジメてきた人たちは、また別の人をターゲットにしてイジメるのだろうか。
どうか、真っ当な人間として生きてほしい。
そのきっかけが私の死であれば、それはそれで大歓迎である。
私は苦しみから逃れることができ、周りの人たちは生き方を反省することができるのだ。
だんだんと意識が遠のく。
頭がふわふわして、なんだか気持ちいい。
「また目覚めるその時まで、安らかに眠るといい」
神様の言葉を最後に、私の意識は完全に途切れる。
「まだ雨は降らせておこうか」
最期にこんな夢を見た。
家族四人で食卓を囲み、温かな状況下で夕飯を食べるだけの日常的に起こりそうな夢だった。
けれど私は幸せで仕方がなかった。
“何気ない日常”というものに、いつしか憧れていたのだ。
幸せいっぱいの夢で生きる私は、眩しいほどの笑顔を浮かべていた。
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