命の解放

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そこから始まったイジメ。 仲良くしていたはずの友達も、気づけば離れていった。 唯一学校だけが穏やかに過ごせる場だと思っていたのに、その平穏すらも奪われてしまった。 一体私は前世でどれほどの悪事を働いたのだろうか。 雨粒が地面に強く打ち付ける。 今日はいつも以上にひどい雨だ。 少し駆け足で自転車置き場へと移動する。 良かった、今日も自転車は無事だ。 何度か自転車のタイヤに穴を開けられた経験があるため、放課後になる度に自転車が無事か不安になるのだ。 どうやら一度、教師に穴を開けている現場を目撃されたらしい。 「イジメられているのか?」と聞かれた私は、その質問に頷かなかった。 もし家族に連絡がいくと余計面倒なことになる。 心配されるどころか、むしろキレられるだろう。 幸い、タイヤに穴を開けていた人たちは不良とされている男子だったため、イジメの疑いは晴れた。 きっと先ほどの女子か誰かが頼んだのだろう。 本当につまらないとをする。 スカートのポケットに入れてある、キーホルダー付きの鍵を取り出して、自転車の鍵穴に挿し込んだ。 さらに雨脚が強くなる中、自転車に乗って正門を目指す。 風が吹いていないだけありがたい。 自転車を漕いで目指すのは自宅ではなく、週に一度足を運んでいる“水月神社”だった。 もはや雨の日に水月神社へ行くような感覚になるほど、雨というものが当たり前と化してしまった自分が怖い。 車通りの少ない道路の脇を一直線に走る。 お世辞にも都会とは言えないこの町は、住宅街が大半を占める長閑な場所だった。 とはいえ田舎とは言い切れず、私が通う高校の生徒数もそれなりに多い。 けれど町に合った平和な学校生活を送れるものだと思っていたため、イジメの標的にされた今、心身共に疲れが溜まっている。 家は学校以上に居心地の悪い場所のため、唯一心の休まる場所が水月神社だった。 私が水月神社に初めて行ったのは、確か幼稚園の頃。 曖昧な記憶しかなかったが、その頃はまだ仲良し家族だった気がする。
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