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「面白いことを言ってくれる。私は水を操る神だ、むしろ雨というものに変えて、身体中に打たれるのもまた良い」
最初は美しいと思っていたけれど、その話を聞いて厨二病なのだろうかと思ってしまう。
「厨二病とは失礼な。先ほどまで私に願っていたではないか。苦しみから解放させて欲しいと」
「えっ…」
先ほどの願いは決して口にしていないはずだ。
さらに厨二病と心の中で思っただけである。
まるで心が読まれているようで気味が悪い。
「今度は気味が悪いと?
本当に君は失礼な人間だね」
本当に心を読まれているのだろうか。
戸惑っていると、彼は私の隣に腰を下ろした。
地面は濡れているはずなのに、迷いもせず座り込んでいた。
さすがの私はスカートを汚したくないため、屈む形を保つ。
「初めて君がここに来た時を思い出す。まるで今とは正反対の、ビー玉のように輝いた目をしていた」
「初めて…?」
「鳥居の向こう側には知らない世界があると思っていたのだろう?」
ドキリとしたのは、図星だったからだ。
確かに私はそのように思っていた。
けれど、彼の言う初めてとは一体どの時のことを指すのだろう。
正直、今でも知らない世界があることを願っているからだ。
「それがどうだ、次に来た時にはもう死んだ魚のような目に変わっていた。まさに今のような目だ」
彼は雨に打たれているはずなのに、なんとも美しく輝いているような気がした。
そんな彼のライトブルーの瞳こそが、ビー玉のように思える。
普通なら私のように着ているものがびしょ濡れになり、髪だって乱れ───
「……え」
目を疑った。
なぜなら隣にいる彼は、この雨の中で一切濡れていなかったのだ。
長い髪はサラサラとした状態を保っており、通常の和服なら水を吸って色が変わってもおかしくないというのに、そのような部分が一つもない。
彼は雨に濡れていないと同然だった。
思わず空を見上げると、どんよりとした雲から無数の雨粒が降りてくる。
やっぱり雨は止んでいない。
「どうだ、私が人間ではないと思い始めてきただろう」
「貴方は本当に───」
水月神社に宿る神様なのだろうか。
それとも私がただ疲れているだけなのかもしれない。
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