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2.アイドルへの道
みのりが小学生になった頃のこと。
――思い起こせばもう、アイドルに挑戦を始めてから、かれこれ四年くらいになる。
みのりは、華やかなアイドルに憧れた。そして、自分もやってみたいと父に我が侭を言い、とある芸能プロダクションが運営している養成所に入れてもらったのだった。
それから四年余り。みのりは完全に行き詰まっていた。
ダンスも歌も、決してレッスンを欠かすことなく頑張っているのに、一向に成果が上がらないのだ。
表情が辛そう。
動きが硬い。
華やかな雰囲気に欠ける。
改善を図れば図るほど、上手くいかなくなっていったものだ。
見るからに厳格そうなお父さんが、口を開く。
「みのり」
……といっても、怖そうなのは見た目だけ。中身は、娘を超がつくほど溺愛しているという、大変優しいお父さんだったりする。
「しんどそうだな。くじけたかい?」
お父さんは、みのりを責めるわけでも哀れむわけでもなく、ただ一言。そう言った。
このところ、みのりから元気が失われているように見えたから。
「うん。正直、しんどい。くじけちゃった」
「それでも、諦めきれないんだろ?」
「……うん」
どうにか頑張り続けていたのだが、今はもう、ダンスを踊ることも、歌を歌うことすらも、苦痛になっていた。
かつては、とても楽しいと思えていたことなのに。
「無理に続けることはないよ。しんどいなら、一旦離れてみるのも手だよ」
「……」
父の言葉に、みのりはうつむく。
それしかないのだろうと、わかっているから。
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