声にならない想いが

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声にならない想いが

 三校時が終わってから早弁をして、また二人連れ立って屋上にやってきた。前日よりは青みがかった空に、飛行機雲が一本ラインを描いている。なんとなしにそれを見上げていると、千賀に先手を打たれてしまった。  かちゃりと音がして、俺のベルトが緩められる。気付いて顔を戻すと、ホックを外してジッパーを指先で摘んだ千賀が、自分も一緒に腰を下ろしていくところだった。  くつろげた前立てに手を這わされて、それだけで熱が生じる。 「もらう、な」  切羽つまったように囁く声が愛撫のようになぞり、下着を押し上げた俺を解放するために、千賀は両手で布地を引き下げた。  ぶるんと飛び出し主張したものを、躊躇なく唇で捕まえられる。男同士なのに、どうしてそう思い切りがいいんだ。  既に頭を覗かせている敏感な部分に粘膜が触れ、それだけで腰が砕けそうになって、背後の壁に上半身を凭れさせる。  まさか経験があるのかとは問えなかったけど、千賀の動きは巧みだった。優しく頭を撫で、肉で締め付けながら擦り、絡めて扱かれる。  耐える意味なんて勿論ない。悔しいから少し頑張ってはみたものの、今度は自分もするんだからと思えば、早く達する方が親切だと思い直した。 「――っく、イく、せん、が」  股間に寄せられている頭に両手を添え、柔らかな猫毛を掻き混ぜる。つい腰を突き出してしまった俺を詰るそぶりも見せず、動きを止めた俺を収めたまま、嚥下する音が耳に届いた。 「色っぽ……」  はあ、と吐息して上目に見上げる千賀の方が、余程色っぽいと思うんだけど。それは口にしないで、最後に鈴口の周りを舐めてから着衣を整えてくれるのを、出した余韻の中で見つめていた。  少し疲れた様子の千賀の頬に両手を添えて撫でると、いかにも驚いた風に腰を上げようとするから、肩に手を遣って自分に引き寄せてみる。 「気持ち良かった。俺も出来るかな。下手だったらごめんな」 「お、俺だって初めてだし。んなの男同士だから、気持ち良さそうって思ったことしたらいんじゃねえかなって、それで」  制服越しにも、バクバクと千賀の鼓動が速いのが伝わってくる。なんだか無性に嬉しくなって、笑ってしまった。  戸惑う千賀の耳に口を寄せて、わかった、と伝える。  やっぱり真っ赤な耳に気付いて、つい軟骨に歯を立ててしまった。 「っしゅん、あ、そこ駄目、も、駄目って言ってんのにっ」  揺れる腰を両腕でホールドして、深く咥えてストロークしながら鈴口を突く。既にもらうもんはもらったというのに離さずにいる俺の髪をかき乱し、千賀は悲鳴を上げている。 「やぁっ」  下半身が震え、先刻より薄いものが喉奥に飛んだ。余さず受け止めてもう一度舌を絡めると、しゃくりあげる声が降って来る。 「も、許してぇ……」  千賀が施してくれた様子を真似てしてみたら、割とあっさりイってくれた。そのことに俺は満足していたのに恥ずかしそうだったから、ちょっとした悪戯心に加えての自身の情欲に従い続けると、千賀は混乱しつつも高みに昇った。  俺としては満足感しかないんだけど、千賀には辛かったようだ。へなへなと落ちそうになる腰を支えたまま着衣を整えてやり、隣り合って壁に凭れて座る。  俺の肩に体重をかけている千賀は、今までに感じたことにない情動を起こさせた。  このウイルスの潜伏期間は、未だ判明していない。
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