0人が本棚に入れています
本棚に追加
ぴちょん、と屋根の端から雨の名残が落ちる。その間隔はだんだん長くなっていて、もうそろそろ、仕舞いに差し掛かっているのだろうと分かった。
「まだ、やまないね」
「――うん」
耳に届くのは光の粒。洗われたあとの空気は心地がいい。
何にさえぎられることもない視界は良好で、小高い丘の上にある東屋からは、閉じた傘を武器にしながらかけていく子どもが何人も見えた。
雨の日にしか会えない、なんてひどくロマンティックな言い換えだと思う。この魔法は、お互いの帰宅手段が変わるという単純な仕掛けでできている。
それでも今の僕たちにはこれしかなくて、これ以外には上手くできる自信がなくて
「今日の雨も、長いね」
「――うん」
一緒にいたいよ。
それすらも言葉にできずに、晴れ渡った空の下、こうやっていつまでも、雨を降らせ続けることしかできないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!