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「さてと、そろそろ行きますか…… 相棒」
バイクのボディをポンポンと2度軽く叩いてから、ヘルメットに付いている
ゴーグルをシュッと目の位置に下げた。
「ギュイン、ギュイン、ギュイン、ギュイン、ギュイン」
スロットルを空吹かしして自らを鼓舞し始める彼女。
「ゴー!」
「ギュイーン!」
掛け声と同時に右手のスロットルをグイッと回すと、バイクはそのパワーを持て余すかのようにフロント部分を高く持ち上げウイリーをした。
それはまるで昔みた西部劇、カウボーイが暴れ馬に跨り
「ヒヒーン!」
と、いななく姿を彷彿とさせた。
彼女はウイリーをしたまま、小高い岩山の頂上から地上めがけて飛んだ。
広大な砂漠、太陽を背に浮かび上がる彼女とバイクの小さなシルエット。
その光景は飛んだというより、上からゆっくり ゆっくり舞い降りてきたという表現が似合う。
そして地上に着地する瞬間にスロットルをギュインと ひと吹かしして、そのまま地上1メートルくらいのところを土ぼこりを巻き上げ、大地を劈くが如く走り出した。
上半身をフロントカウル内に収めた前傾姿勢でスロットル全開、戦闘モードに突入だ。
彼女の鋭い、射るような眼差し。
それはまるで獲物を狙い、追い詰める肉食動物のようであった。
「ん? チッ、賞金稼ぎ か!」
猛スピードでこちらに向かって飛んでくるバイクに気付いた男は、軽く舌打ちをし そう呟くと、特に慌てる様子も無く足元のアクセルペダルをベタ踏みした。
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