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しかしすぐに追いついた彼女は、つかず離れずの距離を保ちながら男の後ろに張り付く。
迫りくる茂みやらサボテンやらの植物、岩山やらをかわして走る2台。
かなりのスピードが出ているため突然 障害物がパッと現れ、それを避けた次の瞬間また新たな障害物が目の前に次々と現れる。
一瞬の判断ミス、操作ミスが大事故に繋がるであろう。
そんな極限状態が続くにつれて男の表情が見る見る強張っていく。
それに比べて彼女の鋭い、射るような眼差しは変わっていなかった。
それどころか、時折りかすかな笑みすら浮かべたような表情をした。
マシンもテクニックも彼女の方が一枚も二枚も上手だった。
先ほどのような障害物もなくなり、景色は何もない広い砂地に変わっていった。
アクセルペダルをベタ踏みで必死に逃げる男のすぐ後ろ、余裕の彼女が右手のスロットルをクイッと軽く開いた。
それだけで車間が一気に縮まる。
彼女は、触れるか触れないかというギリギリまでバイクを近づける。
「ねぇ! 速い男は嫌われるわよ、アハ!」
かと思うとまた少し距離を離す。
そしてまた触れるか触れないかの距離まで近づく。
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