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そんな私を気遣ってなのか、迅は度々私を探して来てくれた。何てことのない話をぽつぽつと話すうちに、お互いを名前で呼び合うまでの仲になれた。
そして他の女子の反感を買う理由がよく分かった。
いつしか私もあの子たちと同じ気持ちなんだと気付いた。
「……ね?」
「みーうーねー!?」
「ふぉっ!?」
視界に迅の端正な顔立ちが現れた。
「ふぉっ!?てなんだよ、相変わらずウケるわー」
「だって…急に、顔近くにあったから」
「だって美雨音、呼んでも全然反応しないんだもん。魂抜けたのかと心配したわ」
「え…ごめん。ちょっと昔のこと思い出してて」
「へぇ、何?何?もしかして、俺のこと?」
「えっ……」
思わず視線を逸らす。しまったと思った時には既に遅く、頬がどんどん火照っていくのが分かった。
「なあ、美雨音っていつから髪伸ばしてんの?」
その言葉と同時に、さらりと一握りの髪の束が浮き上がるのを感じた。思わず迅君に顔を向けると、手櫛の間を通る髪の感覚を楽しむように口角を上げていた。
と、いつもより強い彼の視線とぶつかった。
「中学生くらいかな……」
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