君に溶けて

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   翌朝僕が準備をしていると母さんが起きてきた。 「どうしたのこんな早くに」  驚いた顔をするのも無理はない。今は朝の五時半頃。太陽だってやっと起き始めた頃だろう。 「ちょっとね」  僕は準備を終えて椅子に座る。 「ねえ母さん。僕さ、好きな子が出来たかもしれない、いや出来てた。多分前から好きだったんだと思う」 「昨日連れてきた子ね」 「えっ」  起きてたのか。さすが、親ってのはこうも鋭いのか。 「事情もうっすらだけど聞こえてたわ。その、色んな事情を持つ子がいるのね」 「うん」  昨夜の僕と同じように、母さんはお湯を沸かし始めた。 「あのさ、多分僕あの子のこと助けたいんだと思う。母さんも手伝ってほしいんだけど」 「昨日見たあなたはどこかふらふらしててすごく危なっかしく思えたのに。それで、私は何をすればいいの? 手伝うって言っても何をしていいか分からないけど」  そうか、姉さんと重ねて見てただけじゃなかったのか。  さすがだよ、本当に。 「あの子――清水さんっていうんだけど、優しくしてあげてよ」 「……優しく? どういうこと?」 「そのままの意味。それだけで、大丈夫だと思うから」  首を傾げた後に、母さんは柔らかく笑った。 「わかったわ」 「じゃあちょっと行ってくる」 「行ってらっしゃい。危ないことはしないでね」 「もちろん」  振り返って僕も笑顔で返す。  ごめんな、母さん。
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